連休明けとともに検索数が増加したが、今回の件では、改めて人間の体の筋肉の役割について実感することになった。
普段は、体の筋肉がどう働いているかについて意識することはない。スポーツなどの後で筋肉痛になったり、仕事疲れの肩こりで悩ませられたりするくらいのものである。
ところが今回のように右肩から背中、右腕のすべての筋肉が痛むと、じっとしていても必ずいずれかの筋肉が働いていることが判るのである。どの筋肉も働いていないという状態などない。
先ず、頭を支えるために首の筋肉が働いている。それに引っ張られて、肩や背中の筋肉が働く。腕をだらりと垂らしているつもりでも、腕の重さを支えるために肩から腕の筋肉が働いている。体を起こしていれば、姿勢を保つために肩や背中の筋肉が働いている。
右上半身が痛いので、左手で歯を磨いたり顔を洗ったりしても、左腕の動きに合わせて右上半身の筋肉も伸びたり縮んだりする。
つまり、じっとしていても痛くて我慢できないと書いたのは、そういうことなのである。だから、筋肉を働かせないためには寝るのが一番ということになる。しかも仰向けに限ることになる。
右側を下にして横になると、当然右半身の筋肉、特に肩から腕の筋肉に体重が掛かるので痛い。とても痛い。
左側を下にすると、右腕をどのような位置においても右肩と右腕の何らかの筋肉を使うので痛い。どのような角度でも痛い。
うつ伏せになると、腕と肩が床面から押されて不自然な体勢になるので、これは結構痛い。
つまり仰向けが一番楽ということになるのだが、それでも右腕そのものの重さがあるために多少筋肉が働く。
前回、三平ポーズかグリコポーズが楽だと書いた。筋肉が痛むのは右上半身の背面で、胸や腕の内側の筋肉は痛くない。つまり背中や肩、腕の外側の筋肉を弛緩させ、胸や腕の内側筋肉だけを使って済む姿勢というのが三平ポーズとグリコポーズだったわけである。
「ストレスによる自律神経失調症ですね」
「えっ?」
「ストレスとかイライラするとなるんですよ。自律神経失調で血行が悪くなって筋肉が固くなる・・・」
「はあ・・・」
「ストレスありません?」
「ええ、あります・・・」
「イライラしてませんか?」
「ええ、してます・・・」
「ね、だから腕の痛みが気になって仕方ないんですよ」
「・・・!」
腕が痛いのも気のせいだって言うか? 痛いと思って気にするから痛く感じるって言うのか? 現実に筋肉も張っているし、こんなに痛いのに・・・俺は整形外科に禅問答をしに来たわけじゃねぇぞ。
「これは整形外科じゃないですね」
「・・・!」
医者は「確かにずいぶん硬くなってますね」と言いながら、肩に局部麻酔の注射を打ち、鎮痛剤と筋肉弛緩剤と精神安定剤の処方箋をくれた。そして、最後にこう付け加えて脅した。
「これで治らないようなら、鬱病かもしれないので別の治療法が必要です」
「・・・!」
麻酔が効くと痛みはだいぶ楽になった・・・
ストレスにしてもイライラにしても、確かに幾つか思い当たることがあった。イライラすることが多くなっていた。連れ合いも「最近心が狭くなっている・・・」と評した。
そうか、気づかないうちに俺はストレスを溜め込んでいたんだ・・・鬱病になりかかっていたんだ・・・
でも、ちょっと待てよ・・・
ストレスがありませんか? イライラしてませんか?
誰だって聞かれりゃ、「ハイ!」って答えるんじゃないか? 世の中にストレスもなく、イライラしてもいない人間なんているのか? 沖縄の八重山でのんびりした島に暮らしてりゃ別だけどな・・・
よくよく考えると、医者の診断だけはどうも納得がいかなかった。
連休前と連休の谷間にどうしても終えておかなくてはならないことがあって、かなり根を詰めたのも事実である。悪化する前日にクルマで遠出したし、渋滞を避けて夜遅くに帰ってきたから、そういった疲れが溜まっていたかもしれない。だから、過労で肩こりが悪化したというのなら判る。
それに痛くなった当日、根津神社のつつじ祭りに無理して出かけなければ、こんなにひどいことにならなかったかもしれない・・・
それをストレスというなら、確かにストレスに違いないし、整形外科ではないというのもそうだろう。
辞書には、ストレスとは精神緊張・心労・苦痛などのごく普通の刺激で引き起こされる生体機能の変化、一般には精神的・肉体的負担となる刺激や状況とある。
つまり、過労はストレスってわけか?
もっとも自律神経失調症については、Wikipediaでは次のように説明されている。
交感神経と副交感神経の2つから成り立つ自律神経のバランスが崩れた場合に起こる病気である。
正式な病名ではなく、医学界では独立した病気として認めていない医師も多い。症状も多様である上に、ストレスなどの精神的な問題も関係していると見做されているため、非常に曖昧に使われている病名である。
診断を受けてから気が滅入ってしょうがなかった。もしかしたら俺は鬱病なんじゃないか・・・最近は鬱病になる人が多いって話だしな・・・
そんな話をしたら、連れ合いがこう言った。
「あの先生はね、鬱病が好きなの。すぐに鬱病にしたがるって、みんなの評判よ・・・」